炭酸カルシウム博物館

身近にある炭酸カルシウム

炭酸カルシウムは私たちのまわりに、実に多様な形で存在しています。
そして、実に様々なところで使われており、私たちの現代生活を支える名脇役とも言えるものです。それは石灰石がまったく無害なものであること、とても白い物質であること、そしてとてもたくさん採れるため安価であることがその主な理由として挙げられます。つぎに、炭酸カルシウムが自然の中でどのような形で存在するか、また、どのように使われているかを見てみましょう。

自然の中にある炭酸カルシウム

1.地球内部のエネルギーの作用で形成されたもの

地殻変動、熱、圧力などの作用により、炭酸カルシウムは様々な形に変化します。前の項でも説明した炭酸カルシウムの結晶鉱物の方解石、あられ石や、やや結晶の度合いが低い大理石、石灰石があります。方解石は屈折率が高く、宝石と同じようにカットすると非常に美しい光を放ちます。但し、柔らかく傷つきやすいこと、割れやすいのでカットしにくいことなどのために宝石として実用的なものではありません。
写真提供
1) 群馬県立自然史博物館ホームページ (http://www.gmnh.pref.gunma.jp/)
2) 空想の宝石結晶博物館ホームページ (http://www15.plala.or.jp/gemuseum/)

2.生物が作り出す炭酸カルシウム

現在、地球上にある炭酸カルシウムのほとんどは、サンゴ、貝、フズリナ、ウミユリなどの生物が「殻」として作り出したものです。
さて、ここでちょっと変わった例をご紹介しましょう。
ここで紹介するのは真珠です。真珠の成分の約93%が炭酸カルシウムです。その表面はごく薄い炭酸カルシウム(アラゴナイト)の層とタンパク質の層とが規則正しく積層した構造をしています(図)。
炭酸カルシウム1層の厚みは約400ナノメートルであり、自然がつくるナノマテリアルといったところです。可視光線の波長(380~780ナノメートル)と同じくらいの大きさの規則正しい構造により光の干渉という現象が起こり、あのような魅惑的で奥深い輝きの真珠が生まれるのです。

火星から来た炭酸カルシウム

1993年に南極で火星起源の隕石(ALH84001)が発見されました。
NASAによる研究の結果、この隕石には地球の細菌が作り出すものと似た磁鉄鉱を含む炭酸カルシウムや有機物などの生命の存在を示唆する物質が見つかりました。
写真はこの隕石を電子顕微鏡で拡大して観察したものです。中央のチューブ状のものがバクテリアの痕跡ではないかと推測されています。バクテリアのようなものは20ナノメートルから100ナノメートルの大きさであり、このバクテリアや炭酸カルシウムは36億年~40億年前に火星上で付着したと見られています。

工業的に利用されている炭酸カルシウム

右の図は2002年の石灰石国内生産量とその内訳を示したものです。日本の石灰石の生産量は、アメリカについで世界第2位です。
この図からわかるように、石灰石のほとんどは建築用途に使われていることが分かります。
それでは炭酸カルシウムがどのように使われているかを具体的な例で見てみましょう。

1.建築材料

私たち人間は文明を持って以来、炭酸カルシウムを様々な目的で使い続けています。その用途の一つが建築材料です。例えば、約5000年も前に作られたエジプトのピラミッド。1つの重さが10トンもある大きな石灰石つまり炭酸カルシウムを巧みに組み合わせて作られています。もちろん、石灰石や大理石は現在でも建築材料として使われているのは言うまでもありませんね。また現在ではコンクリート(セメント)の原料として粉状の炭酸カルシウムが大量に使用されています。

2.鉄鋼

鉄鋼と炭酸カルシウム、一見何の関係もなさそうに見えますが、実は切っても切れない深い関係にあるのです。鉄鋼の原料は鉄鉱石ですが、この中に鉄分は60%ほどしか含まれていません。そこで、鉄鉱石の中から不純物を取り除く必要があるのですが、炭酸カルシウムはその不純物と化合して分離させる役割を担っているのです。1トンの鉄をつくるのに約0.2トンの石灰石が使われます。

3.その他の用途

炭酸カルシウムはもっと多くの用途で使われています。
例えば、強度や剛性をアップさせたり燃えにくくする目的でプラスチックやゴムに配合されて使われています。
また、色つやを改善し裏写りを防ぐ目的で紙に配合されています。
さらに、土壌の性質を改善する肥料として農業で使われています。
その他にも、塗料、タイル、陶器、食品添加物、医薬品、歯磨き粉、家畜の飼料、顔料など、私たちの身のまわりにある多くのものにとって、なくてはならないものなのです。
写真提供
石灰石鉱業協会「石灰石のはなし」p.40(1987)
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